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浅香山
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猫の病気

猫のウイルス検査に関するFAQ FeLV検査


Q:猫のウイルス検査で何が分かるのですか?
A:現在猫には,ワクチンで防げない恐ろしい伝染病が3つあります.それらは,ネコ白血病ウイルス(FeLV)感染症,ネコ猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症,ネコ伝染性腹膜炎(FIP)です.猫の血液をほんの少しとって検査をすると,猫がこれらのウイルスに感染しているかどうかが分かります.

Q:小さい猫から血液をとっても大丈夫なんですか?
A:1ml程の血液で十分ですので貧血の心配はありません.またウイルス検査だけでなく血液検査によって健康状態を知ることも可能です.病院ではその猫にとって最適な方法を選びますので苦痛は最小限に抑えられます.むしろ言葉をしゃべらない猫の健康状態を確実に知るためには血液検査は欠かせないものです.

Q:この検査によって猫の免疫不全症のような重大な病気が分かると聞きましたが,治らない病気を分かってどうなるのでしょうか?
A:検査が陽性に出たからといってその猫がすぐ死ぬということではありません.そのほかいろいろな検査をして病気の状態を的確につかんでおけば,常に治療の面で先手を打つことができ,結果的に長生きさせることができると思われるからです.事実,対症療法を行うことによって多くの猫が苦しみから解放され,長期間生存しています.自分の家族の病気ですから,できるだけのことは知っておいて,さらにできるだけの手を尽くすべきではないでしょうか.そしてウイルスに感染しているということは,他の猫に病気を移す可能性があるわけですから,やはり飼い主の責任として,知っておいていただきたいのです.

Q:むしろ陽性などという結果は知らない方が幸せだと思いますが?
A:確かにそういう考え方もあるかも知れません.ただ,早くから診断結果を知っていて,十分注意しながら飼ったり,あるいは正しい対症療法を早めに行えばその猫の寿命が延びる確率が高いのです.ですから,少しでも寿命が延びるよう,少しでも苦痛が和らぐよう,そのような考えで検査をお勧めしています.

Q:FeLV陽性とはどういう意味ですか?
A:この検査では血液中に実際にFeLVというウイルスがいるかどうかを調べます.陽性ということは,血中にウイルスが流れているという意味です.

Q:FeLVが陽性と出たらどうしたらよいのですか?
A:1回の検査で陽性の結果が出ても持続感染とは限らないので,1カ月待ってもう一度検査をしてください.この1カ月間は他の猫との接触を避けたほうがよいでしょう.そして2回目の検査で陰性と出たらもう治ったと考えます.すなわちFeLVに感染しても治ってしまう猫もたくさんいることを覚えておく必要があります.これは感染したときの猫の年齢と深い関係があります.生まれたてで感染するとほぼ100%が持続感染になり,発病しやすくほとんど死んでしまいます.ところが離乳期を過ぎてFeLVに感染した場合は約50%しか持続感染になりませんし,1歳以上の猫では10%しか持続感染になりません.

Q:2回目の検査でFeLV陽性と出たら必ず死ぬのですか?
A:必ずしもそうではありません,陰性になる場合もあります.研究によると,4カ月ぐらいかかって陰転する場合もあるといわれていますので,最初の検査から4カ月たってもう一度検査を受けてください.ただし4カ月を過ぎても陽性ならば完全な陽性ですので,日頃の健康管理に気をつけて,少しでも異常が見られたらすぐに病院で診察をうけ,大事にならないよう早めに治療を受けましょう.しかしながら,かなりの猫があらゆる努力にもかかわらず,不幸な運命をたどります.その間動物の立場に立って,最善をつくすのが飼い主と獣医師の務めではないでしょうか.

Q:4カ月過ぎて持続感染といわれてしまったら,いつかは白血病になって死ぬのですか?
A:必ずしもそうではありません.白血病を起こすのは持続感染の猫のうち僅か20%に過ぎません.むしろ多いのは免疫力が低下して他の病気にかかりやすくなったり,貧血を起こしたりすることです.

Q:FeLV持続感染と診断されてしまった猫ですが,元気でとても病気とは思えません.持続感染とは実際にどんな病気なのですか,またこれからどの様に飼ったらよいのでしょうか?
A:FeLV持続感染というのは病気の名前ではありません.猫の体内でウイルスが作られていて,そのウイルスが唾液の中に出てきている状態が長く続いているのです.ウイルスは猫の体内のいろいろな細胞の中で増殖し,このために様々な目には見えない障害が起こり始めています.また唾液の中のウイルスが他の猫にうつる可能性があります.ですから外に出て悪い病気を拾ってこないように,また他の猫にFeLVをうつさないように,家の中で生活させてください.また人間や犬への危険はありません.また定期的に血液検査をして,貧血や白血球の異常がないものはずっと長生きするといわれています.

Q:検査をして(+)という結果がでても,治療法がないのでは検査をする意味がないのでは?
A:ウイルスを打ち負かす治療法は現在研究途中で,近い将来必ずや光がみえるでしょう.FeLV感染症のいろいろな病気の場合,ウイルスは裏で暗躍しているだけで,現在の重大な病気には直接関係していない場合も多いのです.ですから治療としては白血病があれば抗癌化学療法を行いますし,激しい細菌感染があれば抗生物質の投与を行います.ここでウイルスが+か−かを知っておくことは,治療に対する反応やこれから起こる病気を予測する上で重要です.今日の獣医学は,情報が1つ増えればそれだけ正確な診断治療ができるまでに進歩しています.


猫のウイルス検査に関するFAQ FIV検査


Q:猫のエイズ検査とはどんなものですか?
A:猫固有のエイズウイルス,すなわちネコ猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染しているかどうかの検査です.検査では特殊な方法でFIVに対する抗体を調べます.猫の血液の中に抗体がみつかれば(陽性)その猫はFIVに感染していると診断されます.人間の場合はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しているかどうかを判定するのが,いわゆるエイズ検査です.ですから対象とするウイルスが違うので,猫の血液を人間の検査センターに送っても検査はできませんし,動物の検査センターでは人間の検査はできません.

Q:ウイルスを検出するのではなく,抗体を検出して,なぜ感染していると診断できるのですか?
A:これまでの研究で,抗体があれば95%以上の確率でウイルスが分離される(ウイルス感染が確認される)ことがわかっています.ウイルス分離を行えば一層確実なのですが,10ml程血液を採らなくてはならないこと,結果が出るまで1-2カ月要すること,などにより実用的ではありません.

Q:疑陽性というのはないのですか?
A:どんな試験でもある程度疑陽性はつきものですが,FIV検査の場合は5%以内と低く抑えられています.これは人間のエイズの検査でより精度の高いとされている確認検査法(蛍光抗体法)と同じ検査法を最初から採用しているからです(もちろんウイルスは猫固有のFIVを使っていますが).しかしながら,これでも疑陽性の発生は0ではないので,検査センターでは疑いのある結果が出た場合には,さらに精度の高い確認検査(ウェスターンブロット法)が用意されています.

Q:健康診断の際に採血してFIV陽性と診断された猫ですが,現在健康でとてもエイズには見えないのですが?
A:FIVに感染していること=エイズではないのです.発症していないものは無症状キャリアーと呼び,発症猫とは区別しています.実際に都会では外に出ている健康な猫の12%がFIV陽性なのです.発症がひどくなって,いわゆるエイズの基準を満たすもだけがエイズと診断されます.それでは現在健康な感染猫がこの先どうなるのかという問題ですが,分かっていることは,感染から何年もたってから病気が重くなるものが多いが,何も起こらない場合もあるということです.

Q:FIV陽性と診断されてしまった猫に救いはあるのでしょうか?
A:必ずしもFIV陽性=エイズではないのですから,現在の状態次第では治療法も考えられます.したがって救いが全くないわけではないのです.ただし,ウイルス自体を攻撃する治療法は現在のところありません.まず,現在発症していなければ,小さな問題が生じるたびに正しい対症療法を行ってゆけば,これから先かなり生きられるのではないかと思われます.また,発症中の猫では,症状にもよりますが,抗生物質などで治療可能のものもあり,実際に治療によってその場は命をとりとめる場合もあるのです.FIV感染症は急性の感染症ではないので,このために急に死亡することは多くありません.それでは猫の寿命は一体何年かというと,外に出している猫の平均寿命は約4歳です.そして多くのFIV陽性猫はこれよりも長く生きているのです(死亡平均年齢5.7歳).猫を外に出すと決めた以上,交通事故や他のウイルス感染症など危険要因は沢山ありますので,別にFIVにかかったからといって死期が早まるわけではないと思います.

Q:1頭陽性がいれば同居の猫はすべてかかりますか?
A:かかるものとかからないものがいて,この比率は平均すると半々くらいでしょうか.けんかをしない間柄ならばほとんどかかりません.もちろん感染猫は家の中で飼う必要があります.外で他の病気を拾わないように,他の猫にFIVをうつさないようにという配慮です.また新しく猫を外から拾ってきた場合など,家の中に入れる前に検査をうけるようにすれば,それまでいた猫は安心です.

Q:FIV陽性で症状も沢山見られ,明らかにエイズのような猫を飼っているのですが,これからどうしたらよいのでしょうか?
A:全身状態がきわめて悪化してしまうと,獣医師の努力にもかかわらず不幸な結果となる場合が多いものです.獣医師はこのような場合,いろいろな検査をして,望みがどれくらいあるかという予後の判定を行います.したがって,客観的にみて予後は悪そうだという場合もあるでしょう.また,現在調子の悪い原因が1つ明らかになって,それを直せば延命は可能という判断が下されるかも知れません.そのような場合でも,病院で診察を受けたからこそ延命が可能なのであって,もし見放されていれば,すぐに死亡してしまうかもしれません.とにかく自分の目で判断しないで,診察を受けることです.そして重要なのは,ストレスのない生活を猫が送れるということで,これには変わらぬ飼い主の愛情が一番でしょう.重篤なウイルス感染症と考えずに一種の慢性疾患と考え,気長に治療を受けるようにしてください.

Q:FIVに感染した猫は安楽死させるべきでしょうか?
A:まず安楽死とは何のためにするものか考えて下さい.あくまでも動物のためを思って,動物の苦しみが強いときに,苦しみから救ってやれる唯一の方法が安楽死しかないときに,初めて考えるものなのです.ですから,汚いなどという勝手な理由で猫を安楽死させるべきではありません.したがって,すべてのFIV感染猫を安楽死させるというのは行き過ぎた考えです.病状が進み,とても回復の望みがないときには考えるべきでしょうが,そうでなければ人間やいぬに対する危険もないので,エイズという言葉に惑わされずに飼ってあげるべきです.


猫のウイルス検査に関するFAQ FIP検査


Q:FIPはどんな病気ですか?
A:猫のコロナウイルスであるFIPウイルスが原因です。猫伝染性腹膜炎(FIP:エフ・アイ・ピーと読みます)という名前がついていますが、病名の通り腹膜炎を起こすものが一番多いながらも、他の病気が起こることもあります。腹膜炎が起こると腹に水がたまり、腹部が膨らんでぶよぶよした感じになります(ウエットタイプ)。同じ様な病気が胸に起こると、胸膜炎となり、胸水が溜って肺が圧迫され、呼吸が苦しくなります。別の型では腹膜炎は起こらずに腎臓や肝臓にに硬いしこりができ機能障害が進行するものもあります(ドライタイプ)。発病した猫の治療は、本当に有効な方法がまだ見つかっていないので、症状を和らげる対症療法が主体となります。

Q:こんな病気が蔓延したら猫が全部死んでしまうのでは?
A:多くの猫がこのウイルスに感染するのですが、実はウイルスに感染しただけでは発病しないのです。感染しても90%以上の猫はウイルスを自分の力で殺してしまい、いつの間にか感染は終わってしまうのです。それではなぜ一部の猫が発病するのかというと、多分ストレスその他のファクターが一緒になって発病するのだと考えられています。

Q:FIPテストでは何がわかるのですか?
A:このテストでは猫がFIPウイルスに感染したことがあるかどうかがわかります。猫がFIPウイルスに感染するとウイルスに対する免疫、すなわち抗体を作ります。テストではこの抗体を調べているのです。

Q:FIP抗体価陰性(または100以下)ならば安心なのですか?
A:とりあえず安心してよいでしょう。何か病気があるにしても、その病気が致死的なFIPである可能性はきわめて低いといえますし、健康ならば何ら心配はありません。その後感染源との接触がない限り発病の心配はないと思われます。ただし他の猫との接触があれば、今後FIPウイルスに感染しない、あるいは抵抗性であるという保証はありません。

Q:健康な猫でFIP抗体価400という結果が出た場合、どう考えたらよいのでしょうか?
A:健康な猫で抗体価400の場合は、今ウイルスに感染しているか、あるいは過去に感染があってウイルスが消えて行く途中かの、どちらかです。今ウイルスが感染しているとしたら、将来FIPの発病が見られる可能性もありますが、その可能性はストレスを避けた飼い方をしていれば10%以下の低いものでしょう。

Q:抗体価400の猫でFIPを発病するものが僅かながらいると聞くと、やはり心配です。本当に発病しないといえるようなテストはないのでしょうか?
A:少し時間がかかりますが、時間を追って、抗体価が下がるかどうかを見ればよいのです。ウイルスが体内から消えて行けば、抗体価は下がります。ですから1カ月または2カ月待って、FIP抗体価をまた検査します。その時下がっていれば、ウイルスは消えていっていると解釈でき、したがって安心してよいと思います。逆に抗体価が激しく上がっていると、ウイルスが体内でどんどん増えている状態が考えられますので、あまり良くない兆候です。このような場合には詳しく診察する必要があります。

Q:抗体価が最大の12800と診断されました。今は元気ですが、もうすぐ発病するのではないかと心配ですが?
A:12800以上という高い抗体価も、実はそれほど珍しいものではありません。ただし抗体価だけでいうと、FIP発病のものも、このような高い値を示すものが多いのも事実です。ここで大切なことは、抗体価が陽性ということだけで、FIPという病名をつけてはならないということです。したがって、FIPに特徴的な症状はないか、血液中の蛋白質に変化はないか、などの精密検査を受けた方がよいでしょう。それで異常がなければ、1-2カ月後の検査で、抗体価が下がるのを待ちましょう。抗体価が下がれば心配は少ないといえましょう。

Q:治らない病気の診断を確定して何のためになるのですか?
A:動物のことだからいいかげんな診断で良いということはないと思います。まず確かな診断を行って、方針を立てるのが筋道ではないでしょうか。たとえばFIPだと分かれば、こことここに症状がでるから、このように苦しみを和らげる、というように正しい処置が可能です。また望みがないならばこれ以上苦しみのないように安楽死を考えるということもあるでしょうが、逆に望みのある病気をFIPと誤診して、安楽死など考えるような過ちがあってはならないのです。

Q:腹水が溜り、熱があってぐったりし、いろいろ検査した結果FIPと診断され、その後死亡しました。その時のFIP抗体価は200と聞きましたが、抗体価が高くても病気にならないものがたくさんいる反面、このように激しい症状を出して死亡した猫が200というのはおかしい気がします。テストは本当に正確な値を出しているのでしょうか。
A:この猫が本当にFIPで死亡したと仮定してまずお答えします。決して多くはありませんが、本当にFIPで死亡した猫が200とか400とか低い抗体価を示していることがあります。これはとくに死の直前に抗体価が下がるものが多いようです。これは死が迫るにしたがってもはや熱を生産できなくなって体温が下降するのと同じように、全身の栄養状態が悪化して、もはや蛋白の1種である抗体を作れなくなるというようなことが考えられます。ですから、臨床症状、検査所見がすべてFIPを示すものであって、抗体は0でなければ(100以上)、FIPという診断は確定します。抗体はFIP発症のものでは通常高いのですが、このように低いものもまれにあることを理解してください。

Q:抗体価の高さと病気は必ずしも一致しないのですね?
A:その通りです。FIP発症のものの多くは6400とか12800とか高い抗体価を示しますが、中には200で死亡するものもいるのです。逆に健康で12800や6400のものもたくさんいます。ですからFIP抗体価は、症状が見られる猫の診断の確定のため、補助的に使うのが良いと思われます。


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