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猫の病気

耳の病気


耳の構造

猫の耳は外側からみると,耳介というとんがった特徴的な構造があり,その中に穴があって中に続いています.耳介は遠くの音をとらえるため,また耳に蓋をするための構造です.なぜ普通はぴんと立っているかというと,皮膚の下には軟骨があるからです.そして穴が中に続いているのが外耳道です.しかし,中のみえない部分には複雑な構造があり,外耳道に続いて中耳があり,またその奥には内耳があります.中耳から内耳にかけては,音を聞くことと平行感覚を保つために重要な構造があります.内耳から脳に続く部分は前庭(ぜんてい)と呼ばれます.


先天的疾患

耳の先が内側に曲がったまま生まれるのは,先天的異常です.機能的異常はないのですが,遺伝することが知られているので,耳の曲がったどうしを交配するのは,また耳曲がりを作ることになるので薦められません.しかし耳がカールしていたりねているのがかわいいので,積極的にこのようにした猫の品種もあります.その他,先天的な異常として,左右が不揃いだったり,短かったり,あるいはまれに4つあることもあります.
毛色が白い色の猫は約20%ほど,先天的に耳が聞こえないといわれています.とくに毛色が白で青い眼の猫は黄色の眼を持った猫よりも聞こえない確率が高いようです.これも遺伝することが知られています.耳が聞こえないと,寝ているときに近づいても気付かず,急にさわると驚くといった行動の異常などがありますが,このような猫は外に出すと交通事故など危険に会いやすいので,絶対に家の中で生活させるべきでしょう.


外耳炎と中耳炎

外耳炎は様々な原因と,それを悪化,慢性化させる要因から成り立っています.したがって,ただ耳を掃除すればよいのではなく,それらの原因をすべて取り除く努力も必要です.直接的原因としては,細菌,真菌,寄生虫(耳疥癬),異物があります.また外耳炎が起こりやすい原因としては,アレルギーで耳の中がいつもべたべたしていることなどがあげられます.
感染や炎症が激しくなると,鼓膜より奥にもそれが波及して,鼓膜が破れたり,中に水や膿のたまった袋ができたりして,中耳炎となります.またそれがさらに内耳,前庭へ波及することもあります.
猫は耳の中を触られるのを嫌がるので,正確な診断や入念な治療のためには,麻酔も必要になるかもしれません.老猫の場合には麻酔をかけて安全かどうかの検査も必要です.


耳血腫

耳介の皮膚の下に血がたまり,耳がふくれてしまう病気です.けんかによる外傷,耳がかゆくていつも振る,あるいは引っかくなどで,皮膚の中の血管に傷がつき皮膚と軟骨の間に出血します.血を抜いたり,手術でなおしたり,あるいは最近では薬物でも直せることが知られています.しかしながらここでも,なぜ耳血腫になったのかという原因の究明も大切です.


耳の癌

扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)
強い日光の下で外出する白い色の猫に発生します.最初は耳がただれて皮膚炎のようにみえますが,次第に耳の一部が欠けてきます.癌といってもあまり大きな塊を作ることがないので,けんかの傷かと思って見過ごされることもあるようです.癌は早期発見が重要ですので,おかしいと思ったらすぐに検査を受けて下さい.

耳垢腺腫瘍(じこうせんしゅよう)
耳の中に塊をつくって,あるいはじわじわと浸透して行くように増える腫瘍です.単なる外耳炎かと思っていると腫瘍だったと言うこともあるので,とくに中年以降は注意して下さい.良性の腺腫と悪性の腺癌があります.どちらも完治のためには早期発見が決め手です.また癌とまちがえやすいものにポリープというものがあります.これは慢性炎症によって作られるものですが,きのこのように生えてくるので,癌と見た目では区別できないこともあり,切ってから病理検査で診断します.


猫の特発性前庭症候群

外耳炎や脳の疾患のような明らかな原因なしに,バランスがとれなくなって,前庭の異常が疑われる猫がいます.特発性というのは原因不明という意味です.ある季節には発生して,他の季節は何も無いこともあります.症状も,軽い斜頚(頚が曲がる)から,倒れて回転するようなものまで様々です.原因が全く不明なので,治療法もきまっていません.


耳のダニ

耳ヒゼンダニ(耳疥癬虫)は猫の外耳炎の原因として最も多く,また皮膚病を起こすこともあります.皮膚に病変ができる場合には,頭部,頚部,体幹,四肢先端にみられます.また耳だけの問題の場合にも耳介に病変が見られることがあります.皮膚の変化としては,部分的な脱毛,発赤,,痂皮とかゆみがみられます.したがって掻くことによる傷がかなり激しくなります.また耳の中の問題の場合には,黒い耳垢がたまり,掻いたり激しく頭を振るなどの症状がみられます.人間への感染はまれですが起こり得るものです.皮膚に水庖,紅斑,丘疹,尋麻疹様の病変ができて激しいかゆみを伴います.しかしながら,感染源(猫)を治療すれば,人間の方は治療しなくても治ります.
ニキビダニ(毛包虫)症は通常は皮膚に起こりますが,頭部,耳介,頚部によくみられることから,耳のかゆみの原因として含まれます.
ツメダニ症は別名,歩くフケ,と呼ばれますが,ネコツメダニという白くて小さいフケの様に見える寄生虫が原因です.体幹部や背部にフケのような落屑がみられ,小さな丘疹や痂皮が見られることもありますし,耳の中で動いていることもあります.人間には猫の症例の20-80%で感染がみられるとされているので,猫を飼っている人にかゆみがみられたら人間の皮膚科に行くのがよいでしょう.しかしながら猫の治療を行えば,人間の方も自然に治りますので,どうか猫を悪者扱いしないでください.


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