SPACE


浅香山
動物
病院

猫の病気
寄生虫病

寄生虫のうち,内部寄生虫と呼ばれるものは,体表や耳などに寄生虫と対比して,体の中とくに消化管(胃から腸まで),または肝臓や膵臓,腎臓,さらには肺などに寄生する虫をさします.外部寄生虫ではダニやノミのように昆虫に似た虫の形をしたものが多いのですが,内部寄生虫は手も足もないひも状のミミズのような虫がほとんどです.またもっと下等な生物も寄生虫の仲間として一緒に扱われます.


回虫症

子猫で多くみられる寄生虫病で,猫回虫が原因です.多数が寄生すると嘔吐や下痢,あるいは出血もみられることはありますが,あまり重大な症状は出さないようです.ときおり,吐いたものの中に5-10cmほどの白いそうめんのような線形の虫をみることがありますが,これがたいてい回虫です.これもたまたま吐いたら虫が出てきたということも多く,虫がいるからといって必ずしも吐く原因にはなりません.腸の中に寄生すると,成虫は卵を産み,便の中に卵が出ます.野良猫などがいつもきまった所で便をすると,土の中に卵が産み落とされて,その卵の中で感染可能な子虫が数週かかって育ち,その後かなり長い間生きています.したがってこのような場所が感染源になり,普通は猫から猫へ直接移るわけではありません.また卵を食べたネズミなどの小型動物を猫が食べて感染することもあります.しかし母子間の感染で重要なのが,ミルクを介した感染です.成猫では,腸の中に感染しないで,体の組織内に子虫が長い間とどまる形の感染があります.そして妊娠すると体の抵抗力が落ちるためか,虫が活動を開始してミルクの中にでてきます.すると子猫はすぐに虫をもらってしまうことになります.回虫の卵は便の検査で簡単に発見できるので,みつかったら駆虫薬を病院で出してもらい,比較的簡単に駆虫ができます.症状を出さない猫も多いので,定期的に便の検査を受けるのがベストでしょう.



鉤虫症

口に鈎を持った長い線形の虫で,小腸にくいついて寄生するため,多くが寄生すると貧血や黒色便,血便などがみられます.この虫も雌の成虫が卵を産むと便の中に出て,その後土の中で感染可能な子虫が育ちます.そして子虫は他の猫の口から入って小腸に寄生するか,あるいは皮膚から入って血流にのり,最後に小腸に達します.また回虫の場合と同じに,成猫の体内で眠っていて,妊娠時に活動を開始して,ミルクの中に出ることもあります.したがって,子猫の感染はミルクからが多いものです.この虫も便の中の卵で発見が可能です.したがって,定期的な便の検査と,駆虫薬の使用が効果的です.



条虫症

いわゆるサナダムシの類で,体は平べったいひも状で,無数の体節というくぎりがあります.瓜実条虫というものが最も多くみられます.成虫は50cmにも達し,小腸の粘膜について寄生します.個々の体節が1匹の虫のようなもので,その中に雌と雄の生殖器官があり,卵もその中に存在します.そして虫の尾の方の古くなった体節は便の中に1個ずつ落ちてきます.排泄されたものはすぐにはかぼちゃの種のような形をしていて動き,肛門の回りの毛などについていたり,環境中に落ちて,卵をまき散らします.乾燥したものは白い米粒のようにみえます.卵はノミの幼虫が食べて,幼虫がノミに成熟すると同時に,ノミ体内で猫に感染できる条虫の子虫が完成します.そして猫がグルーミングの際に,条虫の子虫を持ったノミを食べて,猫の体に条虫が感染するわけです.そして2-3週後には,猫からまた次の卵を持った条虫の体節が排泄され,このサイクルが繰り返されることになります.感染した猫には大した症状はでないのですが,おしりのところに動く白い粒がでてくるのはとても気味が悪いもので,注意深い猫の飼い主ならばすぐにみつけることができるでしょう.事実,病院での便の検査で卵や体節がみつかることはまれで,たいていは飼い主が発見して病院にくるようです.駆虫薬も使用できますが,実はノミのコントロールなしには条虫の駆除は不可能です.猫の体に1匹ノミをみつけたら,環境中には100倍の幼虫がいると考えられます.もう少し温かくなると本格的なノミのシーズンになりますので,そのときに効果的なノミコントロールを紹介します.



その他の寄生虫

成猫では嘔吐の内容物に胃虫がみられることがあります.この仲間には毛様線虫,旋尾線虫などがありますが,約1mm(毛様線虫)から1cm(旋尾線虫)程度の小さな虫です.またまれにですが犬糸状虫(フィラリア)感染が猫でみられることがあります.犬に比べて寄生数は小数ですが,まれに肺や心臓が悪くなり症状をだすものもいます.通常は免疫がしっかりしていれば感染は起こりそうもないのですが,ネコ免疫不全ウイルス感染などの免疫を障害する病気と一緒に起こることがありますし,またそうでなくてもまれに寄生がみられることがあります.したがって,現在では犬と同じに,蚊の季節には薬を飲ませて予防しようという考えが主流です.その他肺に寄生する肺虫,肺吸虫,大腸に寄生するストロンギロイデス(糞線虫),肝臓に寄生する肝吸虫,膵臓に寄生する膵吸虫などが知られていますが,わが国では糞線虫を除きあまりみられないものです.



原虫感染症

原虫という下等な単細胞生物が寄生するものですが,複雑なライフサイクルを持っています.猫で多くみられるコクシジウムはイソスポラと呼ばれるものです.また,トキソプラズマも原虫の一種です.また症状はあまり示さないクリプトスポリジウムという日和見病原体も猫に感染します.
ジアルジアも小型の原虫で,猫から猫へ移り,子猫で激しい感染の場合は下痢,悪臭の下痢便,粘液便などの症状がみられ,成猫でも軟便程度の症状を起こすことがよくあります.消化吸収不良のため体重があまり増えない場合があります.通常の糞便検査では発見できない場合も多いので,診断はなかなか困難です.したがって疑われる場合には,よく効く薬を与えてみる場合もよくあります.

E-Mail : asakayama@mac.com


Asakayama Animal Hospital Web Page , since 2004.9.16
Updated: 2004.9.16 | Copyright(C)2001 Asakayama Animal Hospital. All rights reserved.

This page maintained by Hiroshi Nakatsu,DVM.