浅香山動物病院

FIP 猫伝染性腹膜炎

●猫伝染性腹膜炎とは
猫伝染性腹膜炎は一度発病すると、ほとんどが死亡する恐ろしい病気です。原因はコロナウイルスです。猫のコロナウイルス属する伝染病には、コロナウイルス腸炎と猫伝染性腹膜炎の2つがあります。コロナウイルス腸炎は、仔猫に軽い下痢を起こしますが、さほど大きな問題とはなりません。猫伝染性腹膜炎のウイルスにはいくつかのタイプがあり、発症率の高いものから低いものと幅があります。感染したとしても、全ての猫が発病するのではありません。予備軍がいても、終生発病しない猫の方が多いと理解した方がよいでしょう。

●病原性
猫伝染性腹膜炎は主として猫に感染しますが、ライオンなどを含めてネコ科の他の動物にも感染します。ウイルスは、直接的あるいは間接的に、簡単に侵入しますが、感染猫からのウイルスの侵入が繰り返し続かないと、本当の感染は成立しにくいといわれています。通常は1頭だけで飼育されている猫より、何頭か一緒に飼育されている環境の猫、雑種猫より純血種の猫の方が感染しやすいことが知られています。また、感染率には地域性があり、猫と猫の接触が多い寒い地域が高いとされています。年齢的にはすべての年齢で発病がみられますが、6か月齢から5歳齢の間にピークがあります。全体的な統計によれば、1〜5%の発病率です。
多頭飼育されている環境の中にこのウイルスが侵入し、飼育されている仔猫の25〜50%に発病したケースもありますが、一度感染の流行があっても、発病率は次第に低くなることが報告されています。
若い猫では数日から数週間で発病がみられることもありますが、多くの場合、感染して発症するまでに数週間あるいは数ヶ月を要します。
前述したように、感染しても発病しない場合が多いのですが、なぜこのような差があるのかはわかっていません。おそらく他の病気、栄養不良、妊娠、ケンカや手術などを含めた外傷、免疫の低下などさまざまなストレスが影響しているのでしょう。

●症状
この病気には、腹水や胸水が溜まる「ウエットタイプ」と、神経・眼・腎臓・肝臓等が冒され、体内に液体が留まらない「ドライタイプ」の2つがあります。地域性もありますが、米国や日本ではウエットタイプが4分の3くらい占めています。
症状は食欲不振、発熱、元気消失からはじまりますが、ウエットタイプでは腹部が大きくなったり、胸水によって呼吸困難をきたし、次第に衰弱して死亡します。ドライタイプは腎臓や肝臓の障害、神経症状(てんかん、性格の変化、異常な行動など)、眼の障害がよくみられます。中間型もみられることもあります。経過は1〜16週間くらいですが、ウエットタイプよりドライタイプの方が長いとされています。

●診断
診断は総合的な所見から行われます。腹水、胸水の検査、あるいは抗体価の測定だけではこの病気を診断することはできません。生検と呼ばれる組織の一部を採取し、調べる方法が診断には最も有効でしょう。ドライタイプは液体が溜まらないので、診断できるまでにはさまざまな検査が必要となり、時間を要します。症状が似ている他の病気も多いため、鑑別するには慎重を要します。

●治療
ある程度まで症状をやわらげる治療法はありますが、一定した効果は得られにくく、最終的には死に至ります。

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